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卵と壁のはなし [日記]


夕方、TVをつけながら食事の支度をしていたんです。

英語でスピーチする、知っている顔。

村上春樹だ!!

マスコミ嫌いで、インタビューなどもほとんど受けない彼が、何故?

しばしTVの前に座って、見入っていました。



ニュースで、村上春樹がイスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」を受賞、というのは知っていた。

イスラエルの政策とガザ侵攻に反対する団体から、受賞辞退を迫られていたことも。

彼はイスラエルへ行ったんだ!!

これは授賞式でのスピーチだったのです。



スピーチの冒頭、彼はこう述べました。

「作家は自分の目で見たことしか信じない。私は非関与やだんまりを決め込むより、ここに来て、見て、語ることを選んだ」

そして、イスラエルの強大な軍事力をはじめ、戦争を生む社会システムを「壁」

パレスチナの非力な一般市民を「卵」にたとえ、こう続けました。

「卵は壁にぶつかれば簡単に割れてしまう、。ただ、卵は個性を持つかけがえのない存在であり、自分は常卵の側に立つ」
「私はどんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、卵の側に立つもの」
「ガザでは罪の無い多くの市民が命を失った」

と、握りこぶしを手のひらにぶつけるアクションをまじえながら、強い口調で。

ペレス首相の目の前で!!

その表情は、受賞の喜びなど微塵もなく厳しく、何かを伝えたいという信念があふれ出るようで・・・



彼は、あの場であのスピーチをするためにイスラエルヘ行ったんだ。

辞退して、国内で言ったところで、誰にも伝わらないから。

イスラエルの、一般市民の良心に訴えたかったのだろうか?

彼のスピーチで、何かが劇的に変わるとは思わない。

でも、ある種の力を持つ人にしか絶対に出来ないことだってある。



TVをつけていて、本当に良かった。

村上春樹の肉声を聞ける機会は、本当に少ない。

なんだか、感動してしまいました。




関連記事
http://www.asahi.com/international/update/0216/TKY200902160398.html
http://www.asahi.com/national/update/0210/OSK200902100080.html
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200902100087.html
http://d.hatena.ne.jp/takaokun/20090216/p1
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20090216-OYT1T00333.htm


なんかさ、風邪薬が効きすぎて(笑)世界中の人たちに居眠り姿を晒す、恥ずかしい政治家がいて・・・その反面信念をもって、自分の考えを伝えるために出向いていく一作家がいる。どちらが印象に残るか、誰かの心に何かを残すか。良く考えて、もっと真剣に色々やって欲しいっす。



ちょっと補足します、言葉足らずだったので

このタイミングでの受賞とスピーチだから、「壁」はイスラエル、「卵」はパレスチナと思いがちです。

村上氏は、もっと大きな意味で言ったんだと思います。

強大な武力をもって、多くの市民を犠牲にする事がある社会の仕組み、システムこそが「壁」

それに対して「卵」は非力ではあるがこの世にひとつしか存在しない、壊れやすい殻に入った精神。

一人一人の人間の事なんですよね。

「卵」の中にテロリストといわれる人たちがいる、それは事実で、間違った事だと思う。

その「間違った卵」を潰すために一般市民が犠牲になる。

「個」や精神など関係無しに。これはさらに間違った事。

「イスラエルを訪れることが適当なことかどうか、一方を支持することにならないかと悩んだ」

その上で、あの場に立った。

私はすばらしい事だと思います。











高校生の頃から、ハルキスト(笑)

長編も勿論好きだけど、短編集やエッセイ、紀行文が秀逸だと思います。



お気に入りをいくつか


意味がなければスイングはない (文春文庫)

意味がなければスイングはない (文春文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/12/04
  • メディア: 文庫



世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1988/10
  • メディア: 文庫



風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/09/15
  • メディア: 文庫



遠い太鼓 (講談社文庫)

遠い太鼓 (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1993/04
  • メディア: 文庫



羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫)

羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 文庫



もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 文庫



1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 文庫



レキシントンの幽霊 (文春文庫)

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 文庫



雨天炎天

雨天炎天

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/02/29
  • メディア: 単行本




最近の長編は、ちょっと難解なんだよなぁ・・・(苦笑)

大学生の時、「アドレッセンス(思春期)と文学」という講義を受講しました。

お題は、村上春樹と三島由紀夫。

随分楽しくて、夢中で過ごし、必要もないレポートを勝手に提出したりしました(笑)

いつもなにかしら、彼の作品が傍にあります。





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コメント 16

いわもっち

硬派な感じがいたしました。
by いわもっち (2009-02-17 05:54) 

たろう

ボクもテレビのニュースで見ました。
肉声は、初めて聞いたかも(・_・;
by たろう (2009-02-17 07:48) 

たいへー

サムライは、まだいたんですね。
by たいへー (2009-02-17 07:54) 

snorita

だね。同感。
by snorita (2009-02-17 08:42) 

cocoa051

パレスチナ側の人々は、今回の受賞をどんなふうに
見ているのでしょうか。
いずれにしても賛否両論があるでしょうねぇ。
by cocoa051 (2009-02-17 13:48) 

bluebird

◆いわもっち さん、勇気がありますよね。

  私は、辞退すると思っていたので、驚きました。
  笑顔が全く無いところに、決意を感じました。


◆たろう さん、私も驚きました。

  ファンにとっては、とても貴重な映像でした。
  あんなに力強い調子で話す方だったんですね。


◆たいへー さん、あの場に立ったことに大きな意味があると思います。

  賛否両論でしょうが・・・
  男気を感じました。


◆snorita さん、格好いい日本人、嬉しいよね。

  政治家の言葉より、分かりやすいし何かを感じる。
  きれいごとかもしれないけれど・・・
  あの場で言わなくては、伝わらないですよね。


◆cocoa051 さん、そうですね、賛否両論だと思います。

  パレスチナ側の人々は「イスラエルから賞をもらった」
  という事に反感を抱くでしょう。
  イスラエルの人たちは「賞をもらっておいて批判するとは」
  と思うかも知れません。
  冷静にスピーチの意味を考えて欲しいですね。
  難解ですが(笑)



by bluebird (2009-02-18 00:29) 

DEBDYLAN

彼が賞をとったコトは新聞で斜め読みして知ってたけど。
このスピーチのコトは知らなかった^^;

ニュース見たかったなぁ。。。

飄々としたイメージを持ってたから、
このニュースを聞いて正直びっくりした。

勇気ある行動だね。
かなり迷ったんだろうな。
でも言わずにはいられなかった。
ソレもソコで言うから意味がある。
言葉を大切にしてる彼らしい行動だと思います。

彼の作品は大学の頃よく読んだよ。

最近もときどき図書館で借りて読んでる。

姐さんチョイスの中では。

『意味がなければスイングはない』
『風の歌を聴け』
『1973年のピンボール』
がお気に入り。

『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』読んでみたい!!

去年、
友達と『ダンス・ダンス・ダンス』の話になって。
読み直したくなったんだけど見つかんなくて。。。
古本(文庫)を買ったんだけど。
買って安心したのか、まだ読んでなかった^^;

長いんだよなぁ~、アレ(苦笑)

by DEBDYLAN (2009-02-18 22:29) 

bluebird

DEBDYLAN さん、文章の感じで分かるよ、村上ファンだって^^

>飄々としたイメージを持ってたから
そう!ワタシも驚きました。
厳しい表情と口調に。

賛否両論あるって分かったうえで、
あのタイミングであの場所で、スピーチする事を選んだんだよね。
自由でいるって、勇気がいるんだよね。

>『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』読んでみたい!!
これ、前も言ってたよ(笑)
迅速に買いなさい(笑)今ココで買いなさい(笑)
絶対、酒の肴にいいから!!

長編だと、「世界の終わりと・・・」が断然お気に入りです。
また、語り合わなくてはならんことが増えたねー^^
by bluebird (2009-02-18 23:23) 

lucksun

スピーチの様子、ニュースで流れたんですね。
翌日の新聞で読んだくらいで、内容までは把握してなかった……。
読者として誇らしい!
あの人があの場で行ったという事実にものすごく意味があると思います。
歴史的な出来事ですね……。
bluebirdさんのお気に入りリストで読んでないのは
『もし僕らのことばが~』と『雨天炎天』でした。
エッセイや紀行文のたぐいはスルーしてることが多かったので(笑)。
明日にでもちょっくら本屋に行ってきます^^
by lucksun (2009-02-19 00:38) 

bluebird

lucksun さん、本当に偶然見れたんですよ^^

ノーベル賞がまたちらついてきましたな・・・^^;
そんな大物になって欲しくない、複雑な気分です。

本当、読者として誇らしい。
興奮しちゃった(笑)
こんなに芯が強い方だったとは・・・惚れ直しました。

『もし僕らのことばが~』と『雨天炎天』は、お気に入りです。
かるーく読めます。旅のお供にいいの^^
lucksun さんには軽すぎるかなぁ?
『雨天炎天』は、遠い太鼓』とセットで読んでいただきたい。

by bluebird (2009-02-19 21:56) 

Gao・たかとび

わたしも見たよ~。
「うわっ!本人が出てる!!」って思わず声出ちゃったもん。
でも、安西水丸のイラストのイメージがどうしても強くって
はああ、やっぱり60歳なんだね~とへんに実感しました。
(とはいえ、本人の写真もよく見てるというのに。)

わたしも「世界の終りと…」好きです。羊シリーズも。
あと「ねじまき鳥クロニクル」と「アンダーグラウンド」も。
by Gao・たかとび (2009-02-19 22:10) 

bluebird

Gao・たかとび さん、お!見ましたか。

あの貴重映像を!
うん、滅多に見る機会がないせいで、いきなり歳をとった感じ。
少し驚きました^^;

「世界の終りと…」好きだし、お腹減るよね(減らない?)
イタリアンレストランへいきたくなりません?
羊シリーズはワタシも好きです。
最近の長編は、難しいよぉ・・
by bluebird (2009-02-19 22:47) 

duke

肉声、見逃がしました(・_・)
私も大好き。私はエッセイ系より小説が好きかな?羊からカフカまで~。
素晴らしかったと思います。
ごっくん、恥。たるんでる。
by duke (2009-02-20 13:33) 

bluebird

duke さん、そのうちようつべにあがるかもね^^

や、貴重映像でしたよ・・・
初期の小説大好きです。
カフカも良かった。
旅のエッセイも良いんだよねぇ^^

ごっくん、最悪。辞めて正解。
by bluebird (2009-02-20 21:25) 

かおり

村上さんが足を運ばれた意味が伝わってきましたよね
著書は残念ながらいまだに一冊も読んだことないんですが^^;
でも今回のニュースで興味を持ちました♪
by かおり (2009-02-26 08:55) 

bluebird

初期の短編あたりから入られることをおススメします。
今読んでもいいなぁ・・^^
最近の長編は、難解なんですよ。
ココからはいった知人は、みんなリタイヤしてます^^;
by bluebird (2009-02-26 22:59) 

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